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西雲東花についての連絡所です。 トラックバックは現在受け付けておりません。
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全日本フィギュアスケート選手権が終了した頃に更新します。
続きは一日遅れで俺様教師と直球女生徒のクリスマス馬鹿ネタ。








携帯電話の画面を見た瞬間、嵐は顔をしかめた。
アドレス帳に登録してもいないのに、すっかり覚えてしまった番号。このまま電源でも切ってしまえば良いのだろうが、マイクを握り締めて某女性アーティストの歌を熱唱する友人をちらりと見てから、彼女は部屋を出て通話ボタンを押した。

「…もしもし」

地の底を這う不機嫌な声で応じたが、むろん、電話の相手は気にも留めない。

『何かうるせぇな。カラオケか?校則違反だぞ』
「法律違反者に言われたくない」

予想通りの相手に、やはり電源を切るべきだったと心の底から後悔しながら、嵐はケータイを握り直した。カラオケ屋の中は雑音が酷いので、ついつい声が大きくなってしまう。迂闊なことをしゃべると他人に聞こえてしまうので、用心が必要だ。

「何の用ですか?」
『どこのカラオケ?』
「何それ、ストーカー趣味?」

まさか人の行動をチェックするために電話してんじゃないでしょうね、と言外に匂わせる。しかし、敵もさるもの、その程度の嫌味にはまったく動じない。それどころか、さらに質問を重ねてくる無神経さだ。

『誰と行ってんだ?』
「まあちゃんと」
『ああ。丸谷か。そりゃ残念だ』

何が?と心底思ったが、聞かないことにする。だいたい、こういう場合にロクな返事が返してきたためしがないのだ、この男は。

『じゃあ、夜は空いてるか?』
「父も兄もいないので、留守番です」
『そっか』

相手は少し黙ってから、いきなり無茶苦茶なことを言い出した。

『泊まりに行ってもいいか』
「はあ!?いいわけないでしょ!自分の立場わかってます!?」
『どうしてもダメ?』
「当り前です!失職したいんですか!?」

思わず怒鳴ってしまってから、はっと我に返り、ガラスのドア越しに部屋の中を確認する。友人はただ今サビを熱唱中のようで、嵐の電話にはまったく無関心である。小さく安堵の息を吐き、彼女はまたケータイを耳にあてた。

「用がそれだけなら切りますよ」
『いや、それだけじゃないんだけど』
「…何ですか」

そもそも、なぜ自分はこの男の我が儘に付き合っているのだろう。そんな疑問がふつふつと湧き起こる。相手のことは大嫌いだし、弱味を握られてるわけでもないし、それなのに。嵐は最後のところで強硬姿勢に出られない。それが、また、ムカつくのだけど。

「早くしてください。友達に怪しまれちゃう」
『冷たいな』

耳元で響く、笑い声。ふっと吸い込まれるような錯覚を覚える。刹那、周囲の雑音がすべて遠ざかった。

『メリークリスマス』
「え?」
『…って言いたかっただけなんだけどさ』

低い声が小さくなった。慌てて嵐はケータイを強く耳に押しつけるようにして、必死で声を拾う。いつも学校で顔を合わせる時の横暴な態度とは裏腹の、少し寂しそうな様子に、つい引きずられてしまった。

『どうせ会えないだろうから、それだけ言いたくて』
「それだけ?」
『それだけ』

急に顔が熱くなる。何だか、妙に気恥しい。

『じゃあ、また新学期に』
「あっ…あの」
『何?』
「えと……メリー、クリスマス」







部屋に戻ると嵐が入力していた男性アーティストの歌を友人が勝手に歌っていた。

「電話、誰から?」
「…お父さんから」

激しいギターソロの合間に、ひとつ嘘をつく。友人は、ふぅん、とうなずいて、それ以上は追及してこなかった。だから嵐も黙っていた。

(なんで、こうなっちゃうんだろ)

恰好よく歌い上げる友人をぼんやりと見ながら、嵐は小さく嘆息した。

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